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みなまたの民話「山神さんの話」

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 古里田頭の南の方に車道ちゅうこーまか道があった。こっから東へ一キロメートルばっかり行った山のなけ、山神さんがおんなった。この山神さんの回りの山は雑木山で、そんころは炭焼きがいさぎゅう流行っとった。
 ある日ンこつ、一人の炭焼きどんがこの山神さんばみて、「田頭村にゃ神さんなおらっさんとじゃが、こん山神さんば村に移したらどげんじゃろか」と言い出した。村ん人たちは、そるば聞いて「ほんなこつ、そらよかばい」と皆が賛成して、山神さんば村にお迎えしゅうちこて決まった。
 明けん朝、村んもんな大勢で山神さんば運びに行った。運ぶ前に村で一番えらか人が「山神さん、山神さん、おどんが村にゃ神様がおられんで、あぁたば村に肥ろうごたっでお連れしげ来たっじゃがなぁ、なおってよかれば軽うなってくれんかな」とお願いせらしたげなたい。そしたら神様は一人で持ち上げられるごて軽うならしたっちたい。村んもんな喜んで村なかに運ぶこてなった。そして神様ば囲うであった石垣ゃそんまま残して、神様だけば荷車に乗せて運び、村で一番高っか山に安置して祀らったったい。
 それから村にゃ良かこつばかり続いた。山にゃわらび・つわ・ぜんまいがいっぱい生え、畑にゃ大根・黒芋・人参・白菜、なんでも豊作が続いたで、山神さんにゃいつもお供え物がいっぱいじゃった。
 しばらく経って、南の方の山じゃ炭焼きどんの炭窯造りが盛んじゃった。炭窯造りにゃ石がいるもんじゃっで、石を探しに山ん中ばあっちこっち回った。すると綺麗か石が円ば描いたごて並うどっとこれ行き当たり、炭焼きどんな「これ、これ」と喜んでこん石ば運んで来て、早速炭窯ば造りにかかった。とこるが、くあげして二日後にゃ、くが落ちて壊れてしもうた。また造った。また壊れた。こげんこつば何度か繰り返しとったが、仕事にならんもんじゃっで、ある偉かお坊さんに聞きに行かしたとこるが、炭窯の回りに積んである石は、もと山神さんの回りば囲んどった石で、神様ば運ぶときそのまま残したもんち分かった。炭焼きどんな早速こん石ば村ん中に移した山神さんにお返ししたので、あとの仕事は順調にいっていさぎゆう儲かったち話たい。
 (注) くあげ……土を盛り上げ打ち固めて、炭窯の形が出来上ること。

 

水俣市史「民族・人物編」より


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