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みなまたの伝説「住吉神社にまつわる伝説」

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 住吉神社は旧久木野村の氏神で、足利時代、嘉吉三年(一四四三)に建立された。伝説によると日当野村では白鷺が飛んでくると何事か異変が起こるといわれ、村では鶏さえも白色のものは飼わないことになっていた。
 この白色禁止については次のような言い伝えがある。
 当時、足利幕府から厳重な探索の指令が出ていたある重罪犯人がいた。追っ手の目を逃れて肥後路を山手にとっていた犯人は、久木野の山中に身をひそめていたが、探索の網は刻々に縮められ、ついに犯人は日当野の住吉神社境内の池のほとりにそびえる老木によじ登り、枝の繁みに身を隠していた。
 一方迫手の一行は木蔭や岩蔭などに気を配りながら住吉神社までたどりつき、渇き切った喉を池の水で潤おそうと池をのぞきこんだ。そのとき、水面に一羽の白鷺が写っているのを見た。
 梢から、はらはらしながらじーっと見ていた犯人は「神様、どうか見つからないように…」と祈った。しかし、住吉様は犯人の願いを聞いてはくれなかった。迫手の一人が池に写った白鷺を見ようとして何気なく、ふと木の上を見上げたとき、犯人は見つかってしまった。
 追手は神社が聖域であることも忘れて慌てて弓矢を射こみ、遂に鮮血を池の水に散らしながら転落してきた犯人を逮捕した。犯人は「白鷺さえ飛んでこなければ…」と悔しがった。そして、死刑になるとき「白鷺が飛んでこなければ逃げのびたのに…」と独り言をいって、最後には「日当野むらに白鷺が飛びくれば何事か起こらん」とわめき刑場の露と消えたという。
 以来、今日まで血によって汚された池の水は涸れてしまい、雨で一時溜ってもなぜかすぐに水はなくなってしまうようになった。そしてこのことがあってから日当野の村人は白鷺が飛んでくるのを忌み嫌うようになったという。
 また、一説には当時久木野に逃げこんだ犯人は二人であったといわれ、一人は住吉神社へ分け入り、一人は現久木野小学校わきの西きんどうの一軒家に逃げこみ、一杯のお茶を請うた。その家の主人、白坂某はかねて手配中の重罪犯人であることをいち早く察知したが、心よく求めに応じるような風を装いながら、やにわにお茶を犯人の面上に投げつけ、たちまち必死の組み打ちが始まった。組んずほぐれつ激闘数刻、遂に主人は庭にあった馬の鞍で犯人を抑えつけ、ホッと一息ついた途端、犯人は隠し持った短刀で主人の脇腹めがけて突き上げた。「アッ、やられた!!」と、周囲の者は色を失ったが、幸いにも懐に入れていた鏡が切っ先を防ぎ、やうやく犯人を逮補することができ家族のものもホッと胸をなでおろしたという。

 

水俣市史「民族・人物編」より


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