令和8年1月10日(土曜日)、水俣環境アカデミアは市民公開講座「気づけば伸ばせる学習障害~読み書き困難の解決を目指して~」を開催し、水俣市内外から25人が参加しました。
講師は、一般社団法人読み書き配慮代表理事の、菊田史子先生です。
知的発達に遅れはないものの、読み・書き・計算など特定の能力の使用に困難が見られることを学習障害といいます。
菊田先生のご長男も読み書きに著しい困難を示す、読み書き困難を抱えています。ご長男の実例も踏まえた読み書き困難の実態と解決に向けた取組についてお話しいただきました。

まずはご長男のお話しでした。
最初に違和感を感じたのは小学校入学のときでした。入学祝いのお礼の手紙を書こうとしたときに全く文字にならなかったそうです。菊田先生が「こうやって書くんだよ」とお手本を見せながら教えても書けず、ぞわぞわっとしたとのことでした。
4年生になっても書けるようにはならなかったそうです。授業で使うプリントになんとか書いた文字は字形が乱れたり最後まで書ききれていなかったりしていました。しかし、よく見てみると授業の内容をきちんと理解して書いてあります。内容を理解して一生懸命表現しても、読めないから受け止めてもらえない、そんな日々を送っていました。

6年生になるときには学校でiPadを使うことを許可してもらい、ICT機器を使った勉強を始められたそうです。読み上げ機能で文章を理解できたり、タイピング入力で考えを表現できたり、周りの友達と同じように学ぶことができ始め、学力もみるみる向上していきました。自分の障害に合わせて合理的配慮がされることで、社会的障壁をひとつ乗り越えられました。
そして一番大変だった高校入試のお話しに。ICT機器を使って学力がついたきたものの、入学試験でPCを使うこと、入学した後もPCを使って授業を受けたいということを認めてもらえる学校がほとんどありませんでした。色々な学校の入試説明会に行っては相談するというのを繰り返していましたが、読み書き困難の理解がないため正当な配慮を受けられずに親子で苦しみながら入試時期を過ごしていたそうです。そんな中で配慮を認めてくれた慶応高校に入学することができました。慶応大生となったご長男はファッションブランドを立ち上げ、メディアアーティストとして活躍されています。
また、現在では各都道府県の入試要項で配慮についての記載があるそうで、配慮が必要な場合は相談・申請すれば対応してくれるとのことでした。

読み書き困難はどのようにしたら解決するのでしょうか。
読み書き困難は大人になったら治るものではありません。読み書き困難を抱えながらも、社会で不自由なく生活ができるようにするのが解決でしょう。そのためには合理的配慮は欠かせません。障害がある人もそうでない人もお互いに協力して、それぞれの障害に合った配慮がなされなければならない。まずは多くの人に読み書き困難という障害を知ってもらい理解してもらう必要がある、その思いで菊田先生は全国各地で講演を行っているそうです。
そして何よりも、子ども自身を育てることが重要です。どんな方法ならできるのかを繰り返し試して、「これならできる!!」という自己肯定感を高めること。自分には配慮が必要なんだと素直に受け止め、周りにお願いする力をつけること。これらをサポートして、将来的には生きる力・答えのない課題に取り組む力をつけてあげる。その子にあった道具を与えてサポートすれば、どんな子もいくらでも羽ばたいていけるんです、と菊田先生は語りかけて講演を締めくくりました。

その後の質疑応答では、
「息子さんに教育していく中で、親としてはどのような変化がありましたか。」
「検査者講習を受けて検査ができるという人の情報はどのように入手できますか。」
「子どもたちの不登校にも影響している可能性があるとのことだったが、不登校の原因を見つけるための一つの可能性として検査を受けてみるのはいかがでしょうか。」
「ICT機器を活用する上でローマ字の壁などありますが、具体的にどのように活用したらよいでしょうか。」
など、次々に質問の手が上がっていました。

参加者からは、
・障害の支援とは、自立し、社会で支える人を育てるために必要なことだと感じました。
・最近悩んでいたことが講座に出てきて勉強になりました。早速子どもと向き合いたいと思います。
・親として整えられる環境はないか考えてみたいと思いました。ICTを使うことで生きづらさが軽減できるなら、社会全体で理解が進むと良いと思いました。
・前向きに話される先生にとても力をいただきました。
など、たくさんの感想をいただきました。